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2016/03/07

都市外交で中国と接近。都知事の海外出張費は3億3千万円。

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こんにちは。東京都議会議員(大田区選出)のやながせ裕文です。

 

定例会一般質問の続き。今回は「都市外交」についてです。

 

■「都市外交」基金は80億円

 

舛添知事が就任以来、力をいれている政策の一つが「都市外交」。そりゃあもう、かなり前のめりな感じで。

 

先日の代表質問でも、都議会自民党から「都市外交をする前に国内でやるべきことがある」と本会議でダメ出しをされる始末。与党最大会派からダメ出しされるなんて、かなり珍しいことで、くしゅんとなるかと思いきや、知事はどこ吹く風といったようす。かなり強気ではないですか!

 

そこまでして、知事がこだわり続ける「都市外交」とはいったいなんなのか、ちょっと突っ込みを入れてみたいと思います。

 

これまで東京都は海外諸都市と積極的な交流をもってきました。石原知事の時代には、そのリーダーシップで、アジア13都市が参加する「アジア大都市ネットワーク21」を創設しました。

 

アジア大都市ネットワーク21(Asian Network of Major Cities 21:ANMC21)は、アジアの首都及び大都市が連携を強化することにより、国際社会におけるアジア地域の重要性を高めるとともに、危機管理、環境対策、産業振興などの共通の課題に共同して取り組み、その成果をアジア地域の繁栄と発展につなげていこうという、国際的ネットワークです。

 

参加都市など詳細はANMC21ホームページをご覧ください。

 

2000年に発足したこの組織は、一定の成果を収めました。

 

共同事業のひとつである「アジア感染症プロジェクト」は、 専門家(医師、研究者)による恒常的なネットワークを構築し、感染症発生時に即応する各都市の行政、研究、医療機関間の連絡体制を整備しました。 各都市が人的交流をもつきっかけとなったのです。

 

しかし、雲行きが怪しくなったのが2005年。北京が、総会を台北で開催することに反対し、脱退を表明したのです。北京脱退後、2014年にトムスク、ウランバートルが参加し、現在の13都市となりました。

 

■舛添知事は中国重視

 

石原知事の肝いりで始まったこの「アジア大都市ネットワーク21」ですが、舛添知事となって方針は一転します。

 

舛添知事「来年は行わない」 アジア大都市ネット見直し、手腕に注目

 

上記の記事にあるように、2014年のトムスクでの総会で、舛添知事は「組織運営がマンネリ化」し、首長の出席率も低迷していることなどから、組織を見直すことを表明。リーダーシップをとってきた東京の態度表明に、異論を唱える都市もなく、それ以来、総会は開かれることなく活動は事実上休止となりました。

 

では、舛添知事は、アジネット21ではない、どのような都市外交を考えているのでしょうか。そのヒントは知事の出張先を見ればわかります。

 

2014年2月、都知事に就任した直後、ソチ五輪を視察。これは、あらかじめ組まれていた日程であり、東京大会を控えるなか義務ともいえるものでしょう。注目するのは次の訪問先。自らの意志で選んだ最初の訪問先は「北京」でした。舛添知事は、記者会見で「北京」訪問の意義を次のように語っています。会見要旨を抜粋します。

 

北京市長からの招待で東京都知事が北京市を訪問するのは、18年ぶりのことだが、王市長と意見交換を行い、大きな成果を上げることができた。

アジア大都市ネットワーク21については、現在の北京市が脱退した状況は不自然である。

都知事として、就任わずか2ヶ月しか経っていないが、この時期に全ての友好都市に先駆けて北京を訪問することができた。今回の訪問を東京都と北京市との関係強化の第一歩とし、両都市の信頼関係をしっかりと築くことができたと思う。

 

 

これで、ご理解頂けたかと思いますが、舛添知事は「中国との関係修復を都市レベルで行う」ことを考えているのです。中国と国レベルではギクシャクしているなか、就任直後に北京を訪問し、その後、中国が参加していない「アジア大都市ネットワーク21」の休止を宣言したのです。

 

この中国との関係改善は「公明党」の方向性とも一致するものであり、都議会で与党の一角を占める「都議会公明党」の方向性とも一致します。都議会自民党に多少皮肉を言われても姿勢を変えないのは、ここに依拠するものでしょう。

 

そもそも舛添知事は孫文の研究者としても知られており、中国に対する思いは並大抵のものではないのです。外国人特派員協会で「福岡にいた私の先祖は、孫文の革命の手助けをしていました。福岡での炭鉱運営によって為した財で、経済的に援助をしていたということです。」と語っており、中国との関係改善は、祖先から受け継がれた使命であるかのようです。事実上の前任者である石原知事が「尖閣諸島の購入」をぶち上げ、中国との関係を悪化させたことを念頭に、中国と良好な関係を築くことが、舛添知事の大きなテーマとなっているのです。

 

■国と都の二元外交は成功するか?

 

また同じ記者会見で「ご存知の通り両国関係は大変厳しい状況にあるので、彼らの感情問題を解決したい。また彼らは一人っ子政策、高齢者への厚生など、社会福祉の問題も山積みです。東京都ならばその手助けができる。」と述べています。

 

うーん。さすがに、ここまで前のめりな都市外交には疑問符がつきます。

 

言わずもがなですが、外交は政府の専管事項です。知事は、東京都の都市外交が「外交を補完、補強することができる」とも述べていますが、果たして可能なのでしょうか?

 

舛添知事は「2020東京大会でボイコットする国がないように」と、オリンピックの成功を目的としてあげています。しかし、二国間でボイコットされるかもしれないような深刻な状況があったとして、「都が口出しして改善できる」と考えているならば、それは自分のチカラを過信していると言わざるをえないでしょう。

 

市民同士が交流することによって、お互いの国を理解しあう「草の根」外交は、息の長い努力が必要とされますが、長期的には両国の友好関係に寄与するでしょう。しかし、政治家である首長が行う外交は、これらとは次元の違う話で、その言動は我が国を代表する立場を伴うものであり、首長の交代に伴ってやったりやらなかったりする「気まぐれ外交」で、どこまで信頼関係を築けるものでしょうか。

 

国と都で、都合のよい二元外交を行うことを意図しているかに見えますが、その二元性を逆手にとられて、外交巧者の他国に「利用されるだけ」という結果となってしまっては、元も子もありません。政府の足を引っ張ることだけはやめてほしいものです。

 

2020東京大会を控え、またインバウンド消費の獲得が求められるなか、知事が海外で東京の魅力を発信することは必要でしょう。しかし、就任から二年がたち折り返し地点を迎え、存在感を高めたい気持ちはわかりますが、「都市外交」の意義をことさら大きく見せたり、その効果を過信することはやめるべきです。

 

尖閣諸島の国有化についても、国と都が連携することができていれば、もっとスムーズにできたのではないかと悔やまれます。オリンピックでの新国立競技場をめぐる国と都の対立と同様なことが、外交で起こらないように願うばかりです。国と都のしっかりとした役割分担こそが必要なのです。

 

それにしても、知事の出張経費、5か所で3億3千万円は高すぎませんか?