「東京五輪費用1.8兆円」組織委員試算とのニュースが大々的に報じられた。私のもとには「ふざけるな!」「被災地復興にお金をまわせ!」などお怒りの声が多数寄せられている。私も寝耳に水の報道だったので、さっそく都庁で担当者からヒアリングを行った。

 

「この1.8兆円という数字、知ってる?」

 

「私たちにも情報が入ってきていません。大会組織委員会もよくわからないようで」

 

おいおい、これだけ大々的に報じられているのに、それはないだろう。まあ、知っていても知らないというのがこの業界なわけで。再度、組織委員会に問い合わせするように強力にプッシュ。約1時間後、衝撃の回答が。

 

「大会組織委員会は、現時点では、五輪費用の確たる数字を持ち合わせていないとのことです。これから検討していくと言っています!」

 

「・・・・・・・・」

 

さすがに、それはマズイでしょ。1.8兆円という数字のインパクトが強くて、認めることができないというのはわかるけれど、「五輪でいくらかかるかわからない!」とは、あまりにも稚拙な回答。自分たちが携わっている事業の費用がわからんとは怠慢以外のなにものでもない。もう少し言い方があるだろう。

 

この1.8兆円は現時点では、正確な費用なのかどうかは不明。しかし、もしこの数字が正しければ、誰が負担することになるのか。この点を検証してみる。

 

そもそも、五輪費用を負担するのは、大会組織委員会、国、東京都、一部民間という4者に大別される。負担内容はシンプルにわけるとこんな感じ。

 

国→五輪で使用する国の施設整備(おもに新国立競技場整備)、五輪を実施するために増加費用が発生する国所管事業の費用(税関・入国管理など)

 

都→五輪で使用する都の施設整備(新設や増改築費用)、五輪を実施するために増加費用が発生する都所管事業の費用(警察、消防、医療、教育など)

 

民間→五輪後に民間で活用される「選手村の建設費用」など。

 

大会組織委員会→上記以外の大会運営にかかる全ての費用。仮説建物の整備費用、運営人件費やイベント管理費などなど。

 

つまり、国と都、民間が負担する費用については、使用用途がかなり限定されていて、それ以外は大会組織委員会が支払うこととなっている。東京五輪の開催計画を記した「立候補ファイル」では、大会組織委員会の予算として約3,000億円が計上されている。ここが、今回の報道で1.8兆円、6倍に膨張するとされている費用だ。

 

では当初予算の3,000億円とは、どうやって積算したものか?

 

はい。ここに問題があったんですね。

 

この3,000億円は「想定される収入額」をそのまま予算としたもの。想定される収入である、IOC負担金(テレビ放映権)695億円、TOPスポンサー295億円、ローカルスポンサー725億円、チケット売上683億円など、積み上げて約3,000億円。(ちなみに報道では、4,500億円ともされている)

 

立候補ファイルのなかで、収入と支出を同額としなければならないために、支出部分は、項目の費用を精査することなく、収入額にあわせて、適当に項目ごとに振り分けたものだったんです。

 

つまり、立候補ファイルでの「五輪にかかる費用(3,000億円)」とは、ファイル上で収支を均衡させるために出てきた数字で、実際のコストとは無関係の数字といってもよいものだ。

 

「仮設競技会場の整備費や施設の賃借料、テロ対策の強化といった警備費などが当初の見込みを大幅に上回ることが判明した」
費用の大幅な増加は人件費や資材の高騰などを要因とする」

「選手らを輸送する首都高速道路に専用レーンを設置するための補償費や、会場周辺の土地賃貸料など当初は見込んでいなかった負担によるものもある。」

 

などと報道されているが、都庁職員の仕事の緻密さを考慮すると、あらかじめ、3,000億円に収まることがないということは、わかっていたとするのが普通の感覚だろう。そもそも、2012年のロンドン大会でも大会運営費が当初見込みを大幅に上回る約2兆1千億円となり、多額の公的資金が投入されているのだ。

 

では、大会組織委員会の収入(3,000億円)を大幅に超える支出(1.8兆円?)が発生した場合、誰が支払うことになるのか?

 

立候補ファイルには丁寧に答えが記されている。

 

(立候補ファイル 6.1財政保証)

 

十分に保証されている大会組織委員会予算
大会組織委員会予算についての保証
東京2020は大会組織委員会の予算が均衡の取れたものであることを強く確信している。
しかし、万が一、大会組織委員会が資金不足に陥った場合は、IOCが大会組織委員会に支払った前払金その他の拠出金のIOCに対する払い戻しを含めて、東京都が補填することを保証する。また、東京都が補填しきれなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い、補填する。
東京都は、大会組織委員会予算約3,010億円に対し、非常に大規模な財政規模(2012年度の予算で11.8兆円)を有しており、万一の大会組織委員会の資金不足に対しても十分に補填することができる。

 

うーん、どうやら東京都が補填することになりそうだ。

 

東京都が本来負担すべき施設整備費の約2241億円に加えて、よくわからない新国立競技場整備費を国から押し付けられようとしている。さらに、大会組織委員会の費用補填の負担?

 

ちなみに、東京都は五輪開催に向けて約4,000億円の基金を積み上げてきているが、条例で「オリンピック・パラリンピック開催に関連する社会資本等の整備に要する資金に充てるため」と使用用途が制限されている。

 

まずは、大会組織委員会が、早急に運営費用の詳細を明らかにするべきだ。このままでは、招致に成功したときの熱気などは吹き飛んで、東京五輪開催を批判する声が大きく湧き上がってくるだろう。

 

先日、都庁を訪問したロンドン市長のボリス氏の演説を思い出す。

 

「2012年のロンドンのオリンピック開催について、直前までの準備期間は、メディア、社会全体が批判的だったが、1年前になると非常に好意的になり多くの事業に対しても賛意を示してくれた。東京も、これから大変だと思うが、頑張ってほしい」

 

もう一度、東京五輪の意義を考えなおしてみたい。

 

 

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